グラフ電卓を活用して数学ロードを駆け抜けよう!
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■数ナビ(数式処理電卓)の概要 [Map] |
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[御案内] ここでは,数式処理機能を持つグラフ電卓(数ナビ)を 数学教育で活用することの意義や効果についての概要を紹介します。 グラフ電卓の教育効果を感じ取っていただければ幸いです。 |
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■ 「数ナビ」って、何ですか? |
数式処理可能なグラフ電卓は、
関数のグラフ描画ばかりではなく
方程式の解法や微分積分の計算を「文字式のまま」
行うことができるので、煩雑な計算の結果を簡単に知ることができます。
数学的なことを考えているときは、思いついたアイデアを
「いつでも・どこでも」確かめることができることが極めて重要です。
このグラフ電卓を手元においておけばそれが可能になり、
「いつでも・どこでも」数学上の「思考のツール」として利用することができます。
本サイトでは、 このような数式処理機能を持つハンドヘルド機器を総称して 「数ナビ」(数学ナビゲーターの略、「すうナビ」)と呼んでいます。 これは、元石川高専の 阿蘇和寿先生 が提唱された呼び方です。詳しくは こちら をご覧ください。 「数ナビ」という呼び方は一部の高専での呼称に留まっていますが、 テーラー展開を行ったり微分方程式の解析解や行列の固有値まで求めることのできる 機器まで「電卓」と呼ぶのは、その機器の持つ機能について誤解を招きやすいので、 「数ナビ」という呼称が広まることを願っています。 この数式処理機能は、 スマホやタブレットにインストールすることもできるので、 それらも「数ナビ」の範疇に含まれることになります。 「グラフ電卓」に関する全般的な情報は 「こちら」を参照してください。 |
■ 「数式処理」とは、どんなことを行うのですか? |
通常の計算機は数値的な計算しかできませんが、
数式処理ソフトや数式処理機能を持つグラフ電卓は、
数学のいろいろな計算を文字式のまま行うことができます。
たとえば、\(\small \sin 3x\) を微分すると \(\small 3\cos 3x\) が表示され、
方程式 \(\small x^2-(a+b)x+ab=0\) を解くと、
\(\small x=a, x=b\) が表示されます。
具体例は、たとえば下記をご覧ください。TI-89の画面です。
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グラフは、媒介変数や極座標で表された関数でも描画することができます。
カラー表示可能な「TI-Nspire CX CAS」を利用すると、
曲面のグラフを描画して自由に回転させることもできます。
行列式や固有値の計算は、3次以上でもかまいません。
表計算は99列×999行まで行うことができます。
いろいろな例は、販売代理店のホームページでも紹介されています。 また、微積分教育や、応用数学・応用物理などでの利用例も参照してください。
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■ 「数ナビ」には、どのような機種があるのですか? |
数式処理ができるグラフ電卓を発売しているのは、
テキサスインスツルメント(TI)、ヒューレットパッカード(HP)、
そしてカシオの3社だけであり、
国内にグラフ電卓の販売代理店があるのはテキサスインスツルメント社の製品だけです。 ヒューレットパッカード社では、HP49g/HP50gの販売は終了し、 現在はiPhoneやAndroidのアプリとして販売されています。 後継機は「HP Prime」ですが、以前の機種との互換性はないようです。 カシオは多数の電卓を販売していますが、残念ながら 数式処理機能を持つ機種は国内では販売されていません。 高専では主にテキサスインスツルメント社の 数式処理可能なグラフ電卓「TI-89」が利用されていましたが、 この機種は現在は販売終了になっています。 後継機はTI-89titaniumです。 TI-Nspireはカラー表示可能で、処理速度も大幅に向上しています。 |
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同じ機能を持つ、スマホやタブレット用のアプリ(有料)も販売されています。
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■ このような機器を数学教育で使ったりして良いのですか? |
数学教育でこのような機器を利用すると、
「学生が考えなくなるのではないか」とか、
「計算力が落ちるのではないか」という質問を良く受けます。
それは、学生が数ナビの表示する答えをそのまま書き写してしまうのでは
ないかという危惧からきていると思いますが、
それは「全くの誤解である」と断言したいと思います。
「丸写しで利用すると、試験のときにどんな結果が待ち構えているか?」は、
学生自身が自分のこととして真っ先に理解するでしょう。
学生は、誰よりも「分かりたい!」という欲求を持っています。
学生は 数ナビを「分かるためのツール」として利用します。
平成13年度の 授業実践[PDF]では、数ナビの使用頻度の高い者ほど 「数ナビを利用すると自分で考えなくなる」ことを強く否定しています。 成績の低い者ほど使用頻度が高く、 「数ナビを利用して数学が前よりも分かるようになった」と答えています。 成績上位の者は「理論的なことへの関心が増した」と答えています。 使用すればするほど、数ナビの価値が分かってくるのだと思います。 数ナビの数学教育上の意義については、下記も参照してください。 |
■ 数学を考えるとき、数ナビをどんな風に使うのですか? |
数ナビを実際の授業の中でどのように利用すべきなのか、
私見では次の4つの利用の仕方があるでしょう。
最も単純なのは「問題の答え合わせ」としての利用ですが、 この利用法は決して軽く考えられるべきではありません。 「数学が分からない」者にとっては、 これは「天の救い」ともいえるほどの威力を発揮するでしょう。 計算が合わない場合は、誤っている箇所の発見が容易になります。 また、解答が分かることは、解き方を考える上でのヒントにもなります。 「数学」を理解させる上でのグラフ電卓の重要性は、 「式の計算」「グラフ上での理解」「数値の変化」を 簡単に切り替えることができるので、 一つの数学的性質について様々な方向からの理解をさせることができるということです。 同じ内容でも、式の性質から理解する者、グラフをみて理解する者、 数値の変化をみて納得する者など、理解の仕方は人により様々です。 数ナビは、このような多様な理解の仕方に対応することができます。 具体的な使用例を、「学習での利用」のページで紹介しているので参考にしてください。 さらに、その機能を使いこなすようになると、 数学を考えるときの「思考のツール」として使用するようになっていきます。 数学に関して、「この場合はどうなるのだろう?」という疑問を抱いたとき、 数ナビはそれを解決することができるかもしれません。 解決したときは、さらなる疑問が生じてくるでしょう。 簡単に解決できなくても、手計算では困難な計算やグラフを表示できるので、 数学的思考を進めるうえで大きな支援を受けることができます。 数ナビを活用することで、成績の上下によらず、 数学的性質を自分で発見するように仕向けることも可能になります。 下記も参照してください。
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■ 数ナビを使うと、本当に数学の力がつくのですか? |
大阪の私立清風高校では、
この電卓の意義を理解された公庄庸三先生が、
数式処理可能なグラフ電卓TI-92を理数科の生徒に長期貸与して、
本格導入に向けての実践を積み上げていました。
この電卓を2年間利用して清風高校の生徒に対して行われた授業の
教材や生徒の感想、ならびに生徒の発見した内容が公開されています。
下記のサイトから、この電卓の利用が数学教育上どのような意義があるかを お考えいただきたいと思います。公庄先生は、 TI-Nspire CX CASの活用を前提とした中高一貫校向けの教科書も作成され、 iPad版のNspireの操作マニュアルも作成されています。
私自身は、一斉授業の中で使用しました。授業の持ち関係の関係で、 残念ながら連続する学年で継続使用することはできませんでしたが、 それでも次のような効果が得られています。 下図は、「数ナビ(グラフ電卓TI-89)を利用して、 数学が前よりも分かるようになった。」という項目に対する回答を 成績別に見たものです。1ヶ月ちょっとの使用でしたが、 成績が下位の学生ほど「数学が分かるようになった」ことを肯定しています。 図:数学が前より分かるようになった |
■ 実際の授業では、数ナビをどのように利用したのですか? |
高専在職時の授業実践では、教育効果等についていろいろな角度からの
調査を行いました。その結果は、本サイトの下記のページにまとめてあります。
数学の得意な学生は数学的思考の支援ツールとして、
苦手な学生は数学を理解するためのツールとして使用できます。 特に、このツールを使用することで、数学的性質を発見させる課題を、 成績の上下によらずに課すことが可能になります。 数学的性質を発見させる「自由研究」では、 成績の上下によらず「数学的なことで新しい発見があった」と回答しています。 この電卓の数学教育における意義や有用性がお分かりいただけると思います。 図:数学的な性質で新しい発見があった |
■ 工学教育では、どのような形で利用するのですか? |
工学では、いろいろな実験結果に対する解析に数学が駆使されます。
その計算は数学の授業で扱うような簡単な答えになるようなものとは限らないので、
少なくとも数値解を表示できることが必須です。
数式処理電卓を利用すると、方程式の数値解に限らず、
解法可能な場合は解析解を表示させることができます.
また、数式処理電卓のオプション機器であるデータ収集器を接続すると、
いろいろなセンサーを利用して実データを簡単に収集することができ、
統計処理機能を利用してデータのグラフ化や回帰分析なども簡単に行うことができます。 以下は、カラー表示可能なTI-Nspire CX CASの画面です。 処理速度が大幅に向上しています。
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最初の図は、温度センサーを利用した得られたデータを直線回帰したものです。
次の図は、上段は距離の変化、下段はその場合の速度の変化を同時に表示しています。
最後の図は、時間、距離、そして速度の変化を数表で示したものです。
センサーは、50種類以上も利用することができます。
工学教育での利用の詳細は、「こちら」をご覧ください。 |
■ 数ナビ利用の授業に、学生・生徒はどのような反応を示しますか? |
著者の平成13年度の実践結果では、
数ナビ(グラフ電卓TI-89)を利用した授業について
以下のような反応が得られています。
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■ 「グラフアート」って何ですか? |
数ナビのグラフ描画機能を利用すると、いろいろな関数のグラフを
つなぎ合わせて「絵(アート)」を作成することができ、
その作品の全国大会が毎年開催されています。
その作品を作成するには、学生・生徒は、 描こうと思う絵の、どの曲線をどのような関数で表現して、 さらにどのような変域とすべきかを自分で考えることになります。 関数グラフの総復習を兼ねながら、 さらにいろいろなグラフを表示させながら試行錯誤していくことになり、 その過程で「グラフ」と「関数の式」との関係を自然に、 しかも楽しみながら体得していきます。 関数教育の場面では、非常に有効な方法だと思います。 下記は、いずれも学生が作った作品です。 |
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教育上の意義や作り方、そして過去の作品については、下記を参照してください。
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■ グラフ電卓の操作方法がよく分かりません。 |
TIのグラフ電卓の操作方法は、
販売代理店のWebサイトで具体的な画面入りで解説されています。
TI-89については、科研費の補助を受けて
操作マニュアルを作成したので参考にしてください。
TI-92Plusの操作マニュアルは福井大学工学部の川谷亮治先生が、 その後継機であるVoyage200の操作方法の解説は関西学院大学理工学部の山根英司先生が作成して公開されています。これらの機種はフルキーボードを備えていて プログラムを作成するときは便利でしたが、現在はいずれも販売終了となっています。 最新機種でカラー表示も可能なTI-Nspire CX CASについては、本サイトで その操作マニュアルを作成して公開しています。 TI-Nspireでは、iPad版のアプリ(有料)もあります。その 使用説明書は公庄庸三先生が作成して公開されています。
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■グラフ電卓を持っていないと、数式処理を利用できないのですか? |
数式処理のできる本格的な(有料の)ソフトとしては、
Mathematicaや
Mapleが著名です。Mathematicaの販売元であるWolframのサイトでは
この数式処理機能をある程度公開しており、
無料で利用できるページを設けています。
WolframAlphaにアクセスして、たとえば「a^2-b^2」と入力してみてください。
式の入力の仕方はこちらを参照してください.
入力した式に関連するいろいろな出力結果が表示されます。
ただし、ネット接続の状態でないと利用できません。
また、出力内容が多すぎて、
次々にいろいろな計算をしていきたいときはちょっと使いにくいといえます。
一方、これらのソフトと機能的にひけを取らない「無料の」ソフトとして Maximaがあります。 多数のOS(Unix, Windows, MacOS)に対応しておりAndroid版もあります。 スマホやタブレットにこのソフトをインストールしておけば、 ネットに接続していなくても 「いつでも・どこでも」本格的な数式処理を 利用することができます。 したがって、これも「数ナビ」の範疇に含まれます。 「数学」を考えているときは、 思いついたときにすぐに計算して試してみる環境が極めて重要です。 そこで、その解説本を作成して出版しました。 関心を持たれた方はご利用ください。 グラフ電卓がなくても、手持ちのスマホで代数式の計算のみならず、 微分積分や線形代数の計算をすることができます。 1変数関数や2変数関数のグラフも表示させることができます。 さらには、コマンドが同一なので、 PC版のMaximaのコマンドレファランスとして利用することもできます。 iPhoneをお持ちの場合は、PCにインストールして利用するとよいでしょう。
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