Maximaを活用した数学学習

in [数ナビの部屋]

「Maxima」を活用した数学学習を取りまとめました.

「Maxima」を活用して数学の学習ロードを駆け抜けよう!

(注) MathJaxを使用しているので、 スマホでは表示に時間がかかることがあります。
モバイル利用(Android)でのメニュー選択は、 SiteMapを利用するか、 「長押し」から「新しいタブを開く」を選択してください。
■ 数式処理ソフト「Maxima」を活用した数学学習  [Map]


[御案内] 「Maxima」(マキシマ)は,フリーの数式処理ソフトです. 有料の Mathematica や Maple に劣らないレベルの数式処理が可能であり, Linux,Windows,MacOSのみならず,Android版もあります. ここでは,数学学習での Maxima の活用法について解説します.
 なお,世の中の多くのことは、 「正規分布」ではなく「ベキ分布」に従っているようです。
 関連サイトをまとめた「ベキ分布:リンク集」も参照してください。

[お知らせ] スマホ(Android)版Maximaの解説本を出版しました. 計算問題やグラフの確認をするときに非常に重宝します. フリーソフトなので一度試してみてください. PC版のコマンドレファランスとしても利用できます。
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■「Maxima」とは?

 Maximaはフリーの数式処理ソフトです. 数学に関心はあっても, 「数式処理」がどのようなことなのかイメージが沸かない方が 多いと思うので,最初に幾つかの画面を紹介します. 要するに,計算結果を数値で表示する電卓とは違い, 「文字式のままの計算ができる!」ということです.

★所持しているスマホやタブレットがAndroidの場合は, 「Maxima on Android」というアプリを組み込めば, PCのみならずスマホやタブレットでも以下の計算ができることになります!

各種の式の計算
 下図では,式の展開(%i1)や因数分解(%i2),方程式の解法(%i3), そして関数の微分・積分の計算が行われています. (%i4)では \(\small (\sin x)^2\) の第2次導関数が, (%i5)では \(\small e^{-x}\cos{x}\) の 不定積分が求められています.

 3次方程式や4次方程式の解を解の公式を用いて求めることができ, 5次以上の方程式が因数分解できないときは近似解を求めるコマンドもあります. 積分範囲を指定すると定積分の計算をすることができます. 微分・積分の計算では変数を指定するので, 偏微分や累次積分の計算をすることもできます. 文字係数が含まれていてもかまいません. 積分定数は省略されます.

関数のグラフ
 関数のグラフを描画することもできます. たとえば,\(\small y=x^3-2x+1\) の区間 \(\small [-2, 2]\) でのグラフは, 「plot2d(x^3-2\(\small *\)x+1, [x, -2, 2])$」により 描画されます. 画面の左上の箇所には「Gnuplot」と表示されており, このグラフはgnuplotを利用して 描画されていることを示しています. なお,描画コマンドがgnuplotのコマンドとは ちょっと異なることに留意して下さい. もちろん,媒介変数や極座標の場合も描画可能です.

グラフを終えて次のコマンドを打ち込むには, グラフ画面の右上の「×」を押してグラフ画面を閉じる必要があります. コマンドの最後を「;」で終えると, グラフ画面を閉じるとグラフ画面が自動的に保存されて 保存場所が表示されます.「$」(半角)で終えると, グラフが表示されるだけで保存はされません. 次々にいろいろなグラフを試すときは, 「;」ではなく「$」(半角)で終えた方がよいです. 「;」にして試していくと, 試した画面がことごとく保存されていくので注意してください.


 「plot3d」を利用すると曲面を描くこともできます. 下図は,「メキシカンハット」とも呼ばれる \[\small f(x,y)=\frac{\sin\sqrt{x^2+y^2}}{\sqrt{x^2+y^2}}\] のグラフです.\(\small f(x,y)\) を事前に定義しておくと, 次のコマンドにより描画されます. 媒介変数のモードがあり, 円柱座標や球座標で表された曲面も描画することができます. 次のコマンドを打ち込むには, グラフ画面の右上の「×」を押してグラフ画面を閉じてください.
「plot3d(f(x,y), [x,-10,10], [y,-10,10], [grid,50,50])$」


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線形代数の計算
 下図では,線形代数の行列式や固有値の計算が行われています.

 ここでは,最初に行列(matrix) \(\small M\) を定義(%i6)して, その行列式(determinant) \(\small |M|\) , 特性(固有)多項式(characteristic polynomial) \( \small |M-xE|\), そして固有値(eigenvalues)が求められています. 行列の階数,基本変形,逆行列,そして 固有ベクトルを求めるコマンドもあります. (%o9) の後半にある [1,1] は,個々の固有値の重複度を表します. いずれも重複度が1なので重解ではないことが分かります.

微分方程式の解法
 下図では,常微分方程式(Ordinary Differential Equation)の解法が行われています.

 (%i11)では,1階微分方程式 \(\small \frac{dy}{dx}+y=0\) の一般解を求めています. 「%c」は任意定数です. (%i12)では,直前に求めた一般解の初期条件(initial condition) 「\(\small x=0, y=1\)」 を 満たす特殊解が求められています. 「%」は,直前の結果(%o11)のことです. (%i13)では,2階微分方程式 \(\small \frac{d^2x}{dt^2}+4x=\cos{t}\) の一般解を求めています. 「%k1, %k2」は任意定数です. (%i14)では,直前に求めた一般解の初期条件 「\(\small t=0, x=0, \frac{dx}{dt}=1\)」 を 満たす特殊解が求められています.

ベクトル場の表示
 2階微分方程式は,変数を増やして1階連立微分方程式に直すことができます. たとえば \(\small \frac{d^2x}{dt^2}+4x=0\) は,\(\small \frac{dx}{dt}=y\) とおくと \(\small \frac{dy}{dt}=\frac{d^2x}{dt^2}=-4x\) となるので, 1階連立微分方程式 \(\small \frac{dx}{dt}=y,~\frac{dy}{dt}=-4x\) で表されます. このような微分方程式の解の様子は,解を求めなくても ベクトル場 \(\small \left(\frac{dx}{dt}, \frac{dy}{dt}\right)\) を図示すれば, ある程度把握することができます. Maximaには,それを図示するパッケージ(plotdf)があります. このパッケージを読み込んでから「plotdf([y, -4\(\small *\)x]);」を 実行すると下図が描画され, 解曲線は原点を中心とする楕円であることが分かります. 適当な場所でクリックすると, その点を初期値とする解曲線(赤色の曲線)が描かれます.

TeX書式での出力
 さらには,出力された数式をTeXの書式に変換することもできます. たとえば,(%o14)の式をTeXの書式に変換するには, 「tex(%);」とするだけです.

 (%o15)に「false」が返されていますが, TeXの書式が表示されています. 「tex(%)$」とすると「false」は表示されず, TeXの書式だけが表示されます. なお,スマホでも見やすい図とする都合上, 表示画面の右半分は省略されています. 実際には下記の内容が表示されます。

$$x={{\sin \left(2\*t\right)}\over{2}}-{{\cos \left(2\*t\right) }\over{3}}+{{\cos \left(t\right)}\over{3}}$$ (「$」は半角)

 この書式部分を選択してトップメニューの「編集」から 「コピー」して貼り付けてコンパイルすれば, 自分で結果をいちいち入力し直すことなく(%o14)の式が表示されます. (%o15)では円マーク「¥」がバックスラッシュで表示されていますが, 貼り付けると「¥」になります. なお,\(\small \frac{\sin(2t)}{3}\) は通常は「\frac{\sin(2t)}{3}」 と記述すると思うのですが, Maximaでは「\sin\left(2\*t\right)}\over{2}」と表されます. そのままコピーしても,修正することなくコンパイルすることができます.

Maximaの歴史
 このような計算やグラフ描画,そしてTeX書式への変換を, Maximaを利用すると簡単に行うことができます. Maximaは,1968年からマサチューセッツ工科大学(MIT)で開発が始まった 数式処理システム「Macsyma」がもとになっています. そのシステムがLISP言語に移植され,さらには GNU Public Licenseのもとに公開されたものがMaximaです. 数式処理システムとしてはMathematicaやMapleが著名ですが, それらは1980年代に開発されたものなので, Maximaはそれらよりも古い歴史を持ち 機能的にも同等と言ってもよいくらいです.
 Maximaは,インストールできるPCのOSを問いません. Linux, Windows, MacOSにインストールできます.Android版もあり, いずれも「無料」で利用することができます. 手持ちのスマホやタブレットがAndroid系の場合は, それにMaximaをインストールすれば,スマホやタブレットが たちまち本格的な数式処理システムになり, それを「いつでも・どこでも」利用できることになります. iOS/iPad版はありませんが,その場合は「こちら」 を参照してください.

 このページでは,Maximaのインストールの仕方, 基本的な使い方,そして学習上の利用法などについて解説します. 数学を学習する上での「数式処理」の威力を感じ取っていただければ幸いです. Maximaの高校・大学初年次のレベルでの機能は, 冒頭で紹介した書籍の 「 試し読み」にある目次を参照してください. さらに進んだ専門数学での機能は, 「 マニュアルの目次」を参照してください. 整数論や群論のパッケージを利用することもできます.

 なお,数学を学習中の者に「数式処理」を利用させると, 「解答」が丸写しされて「学生・生徒が考えなくなる」という反対意見を 述べられる方がおられますが,全くの杞憂と思います. 考えもせずに丸写ししているとどのような試験結果が待ち受けているかは, 学生・生徒が最もよく理解するでしょう. 「数学を分かりたい!」と最も思っているのは, 教員ではなく学生・生徒自身です. 単純な「答え合わせ」として利用するだけでも, 大きな教育効果が期待されます.さらに進んで, 「思考のツール」として使用するようになれば, 数学上の思考展開が大きく効率化されることが期待されます.

Maxima on line
Maximaを、Web上でオンラインで試すことができます。 アクセスすると、黄色画面にコマンドが打ち込まれた下図の画面が表示されます。

「Clic」を押すと下に結果が表示されます。

「Clear」を押すと、黄色画面のコマンドが消えるので、 そこに自分でコマンドを打ち込んで「Clic」を押すと、 打ち込んだコマンドの結果が表示されます。 エラーが出たときは下記をチェックしてください。
  • コマンドのスペルが正しく打ち込まれているかどうか。
  • 括弧( )の対応関係が正しいかどうか。
  • 数式の積に「*」が挟まれているかどうか。
いろいろなコマンドについては、本サイトのそれぞれのページを参照してください。


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■ダウンロードとインストール

ダウンロード
 Maximaは下記のサイトからダウンロードできます.

Maxima, a Computer Algebra System

 「数式処理」は, 英文では「Computer Algebra System」と呼ばれています. 略して,単に「CAS」と呼ぶこともあります. ダウンロードするには,トップバーにあるメニューから 「Downloads」を選択します. 下図は,選択後に表示される画面です.

 この画面から,Windows版,MacOS版,Linux版がダウンロードできます. Android版は,スマホやタブレットのGoogle Playで 「Maxima on Android」を検索すればダウンロードできます. インストールしないでどんな風になるかを見るには, 上記画面の「Windows」の上の箇所にある 「Maxima Online」をクリックしてください.

 以下では,Windows版の場合のダウンロードの過程を示します.
  1. 上記のDownloads画面の「Windows」の箇所から 「Installation of Maxima in Windows」をクリックすると, 下図が表示されます.


  2. 最初の行には最新バージョンのMaximaのリンク先があるので, それをクリックすると下図のように具体的なファイル名が表示されます.

    手持ちのPCが64ビットの場合は「-win64.exe」を, かなり古い32ビットの場合は「-win32.exe」を選択します.

  3. ファイルを選択してクリックすると保存するかどうかを問われ, 「ファイルを保存」を選択するとダウンロードが始まります. ダウンロードにはちょっと時間がかかるので, 気長に待ちます.


  4. 以上の操作で,Maximaの最新版が[Users]の下部フォルダーである [Downloads]フォルダーに保存されます.そのファイルは, ブラウザーの「ダウンロード」(Ctrl-J)の箇所に表示されます. 2019.03.27時点での最新ファイル名は 「maxima-clisp-sbcl-5.42.2-win64.exe」(131.5MB)です. ダウンロードが終了すると下記の画面になりますが, 不要な画面なので閉じて次のインストール作業に移ります.

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インストール
 ダウンロードしたEXEファイルをは自動解凍ファイルになっているので, ファイルをクリックすると自動的に解凍されます. そのEXEファイルは, ブラウザーの[ダウンロード](Ctrl-J)の箇所から選択するとよいでしょう. クリックすると,ちょっと間をおいて解凍作業が始まります.


 解凍が終わるとインストーラーが立ち上がります.


 インストールの途中では,以下の事について確認が求められます. 特にこだわりが無ければ,「Ok」や「次に」を押し続けていればよいでしょう.
 途中で確認を求められる主な事項は,下記の通りです.
  1. 「ライセンス契約書への同意」が求められる.
  2. インストール先のフォルダーを指定する. デフォルトでは,「C:\maxima-5.42.2」にインストールされる.
  3. スタートメニューフォルダーを指定する.
  4. インストールするコンポーネントを選択できるが, デフォルトのままでよいと思います.

 以上の指定でインストールが開始され, 終了すると下図が表示されるので「完了」をクリックします.


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■ いろいろな「Maxima」

wxMaxma
 インストール後にスタートボタンを押すと, 「最近追加されたもの」として 「wxMaxima」という名称のアイコンが表示されます.


 クリックすると,下記のようなwxMaxmaのトップ画面が現れます. この画面にコマンドを入力することで,いろいろな計算をすることができます.


 白紙の状態ですが,左上の角でカーソルが点滅しています. いろいろな計算をさせるには, その箇所で最初に例示したようなコマンドを 打ち込みます. たとえば,「expand((x+1)^5)」と入力して [shift][Enter] を押すと, 入力式の最後に「;」が付加されて結果が表示されます. [Enter]だけだと改行されるだけなので, 結果を表示させるには必ず[shift][Enter]を押してください. コマンドを入力中は,その行の左端に「赤い記号」が表示されます. Maximaは,入力した式の区切りを示すために 式の最後には「;」をつける約束になっていますが, wxMaximaは [shift][Enter]が押されると式入力の終了と判断して 自動的に追加してくれます.
 下図は,方程式の解を求めるコマンドを入力しているところです. 入力中の行の左端には赤い記号が表示されています. この後で[shift][Enter]を押すと, 入力した式に「;」が付加されて結果が表示されます. N番目に入力(input)した式には(%iN), その結果として出力(output)される式には(%oN)という記号が自動で付されます.


 「wxMaxima」は,GUI (Graphical User Interface) 方式でMaximaを操作できる ようにしたソフトウェアです.Maximaのコマンドを覚えていなくても, 画面上部のメニューからでもMaximaを操作することができます.
 たとえば,画面上部のメニューにマウスポインターをあてがうと, 下図のように日本語のメニューが表示されます.そのメニューを通して コマンドを実行することもできます.ただし, 計算式の入力を求められるときと, 直前の結果に対していきなり処理が行われる場合とが混在しているので, その違いについて慣れる必要があります. 面倒でも,コマンドを入力する方式の方が 「自分でMaximaを操っている」感覚がするのではないかと思います. 下図は,「方程式(Q)」のメニューです. 連立方程式や,微分方程式の解を求めることもできます.


 Maxiaの基本的な使い方については, 「数学学習での活用」や 「リンク集」を参照してください. 手っ取り早く全体像を把握したい場合は, 「Maximaを用いた数式処理」 を参照してください.
 なお,上図に表示される出力式と, 最初の例示画面の 出力式との式表示の違いに留意してください.おそらく, このページを閲覧されている方の多くは「TeX」 を検索する中で到達されているのではないかと思われます. 最初の例示画面はTeXによる出力です.その画面は, 「TeXmacs」に「Maxima」を組み込んで得られています. TeXに慣れ親しんでいる方は, wxMaximaではなくTeXmacsを利用するのがよいのではないかと思います. そのインストール方法については後述します. TeXmacsの他にも,TeXの書式で出力するMaximaがあります. それが,次の項目にある「Maxima on Android」です.


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Maxima on Android
 「Maxima on Android」は,日本の本田康晃氏によりリリースされたものです. 結果はTeXで出力されます. このアプリは,「Playストア」から「Maxima on Android」を 検索するだけでインストールすることができます.ただし, スマホやタブレットの日本語入力のキーボードで数式を入力するのは, 不便極まりないです. 数式入力に特化した(ソフトウェア)キーボードがあるので, そのようなキーボードに変更する必要があります.
 下図は,そのようなキーボードに変更して実行した結果です. 出力されている式は, 最初の例示画面と同様にTeXにより出力されています. 2次元や3次元のグラフ描画も可能であり, Maxima(5.41.0)のほぼ全機能をスマホやタブレットで利用することができます. (2019.03.31現在)

 Maxima on Androidには,PC版にはない特徴があります. たとえば,次のような機能があります.

  • [Enter] を押すだけで,入力式の最後に「;」が付加されて結果が出力される. wxMaximaでは[shift][Enter]とする必要があるが, Maxima on Androidでは[Enter]だけで実行される。
  • 出力式に (%o2) のような番号は表示されない. また,出力式は中央寄せで表示される.
  • wxMaxima のようなメニューは表示されないが, コマンドの最初の2文字を入力すると 該当するコマンドのリストが表示されるので, その中から必要なコマンドを選択することができる. つまり,コマンドの自動補完機能がある.
  • Maxima の公式マニュアル(英文)の日本語訳を簡単に参照することができる. たとえば,微積分や線形代数にどのようなコマンドがあるのかを見ることができ, 個々のコマンドの概要も簡単に参照することができる.
  • マニュアルの中に書かれている実行例を計算画面に取り込んで, そこに表示される式を修正しながら自分でコマンドを試せる機能がある. 個々のコマンドの機能を習得するとき非常に便利である.
  • 入力した式や出力された式を, その後の式入力の部分に簡単にコピーすることができる.
  • Dropbox を利用して,PC版Maximaとファイルを併用することができる.
  • 等々
 以上の詳細は, Maxima on Android (英文)を参照してください. また,Maxima on Androidのインストール方法, 数式入力に便利なキーボードへの変更の仕方, マニュアルの参照の仕方, マニュアルの例の取り込み方,ならびに基本的なコマンドの使い方等は, 冒頭で紹介した書籍を参照してください.
  開発者のサイトでは, ガロア群,楕円関数,佐藤テイト予想,ゼータ関数などの 話題も取り扱われています. このアプリをスマホやタブレットにインストールしておけば, 思い立ったとき,「いつでも・どこでも」, 簡単な計算から高度な数学的計算まで行うことができるのです.

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TeXmacs
 TeXmacsを利用しても, Maximaの計算結果をTeXによる出力で得ることができます. 冒頭での例示画面はTeXmacsによるものです. TeXmacsは, Wikipediaでは次のように解説されています.
 GNU TeXmacsはGNUプロジェクトで開発されている科学技術に特化したワープロまたは組版のフリーソフトウェアである.TeXmacsはその機能にTeXとGNU Emacsの長所を取り入れており,ソースコードはどちらからも独立して書かれているが,TeXのフォントを利用する.TeXmacsはJoris van der Hoevenが開発,メンテナンスを行っている.TeXmacsを使うことで,WYSIWYGなGUIで構造化された文書を作成できる.また文書スタイルを新しく定義することもできる.TeXmacsは高品質な組版アルゴリズムとTeXフォントにより,商用に耐えうる品質の文書を生成することができる.
 要するに,LaTeX文書を見たままに(wysiwygに)編集できる, フリーのエディターです.その概要は,やや専門的ですが GNU TeXmacs (PDF)を参照してください. おそらくは英語論文の作成のためのものであり, 日本語での文書作成には適さないと思います. 使い方を日本語で解説しているサイトは,見つけられませんでした.
 私は,TeXmacsはMaximaの出力式をTeX仕様で得たいがために 利用しているので,Maximaを組み込む以外のTeXmacsの使い方は 分かりません.ここでは,TeXmacsのインストールとMaximaの組み込み方に ついてだけ解説します.

 TeXmacsにMaximaを組み込むには, 相互のバージョンに注意が必要です. 組み込めるバージョンには相性があるようです. 私の場合は,TeXmacsのバージョンは「1.99.9」, Maximaのバージョンは「5.38.1」で使用しています. 以前は「5.31.2」と書いていましたが, 再度試すと「5.38.1」でも大丈夫でした. Maximaのデフォルトでのインストール先は, 古いバージョンは「C:\Program files (x86)」になっていますが, 「5.39.0」以降ではルートディレクトリ(C:\)になっています. TeXmacsにMaximaの最新版が組み込めないのは, このインストール先が異なるからではないかと思われます.

 Maximaの過去のバージョンを表示させるには, ダウンロード画面の1行目にある 「 Files section」をクリックします. 下図は,「Files section」をクリックして表示される画面です.


 各OSごとのフォルダーがあるので,Windowsであれば「Maxima-Windows」を クリックすると古いバージョンのリストが表示されます. 下図は,「Maxima-Windows」の内容です.


 この中から「5.38.1-windows」(2016-06-12)のファイルを選択して ダウンロードとインストールを行ってください. ちょっと古いバージョンになりますが, Maxima自体は1960年代に開発されたものなので, すでに十分なほどの歴史があります.通常使用では, 多少は古くても特に支障はないと思われます. インストールの際,wxMaximaのショートカットを作成するかどうかを 問われますが, 最新版のwxMaximaをすでにインストール済みの場合は, この古いバージョンのショートカットは作成しない方がよいです. 「作成(create)」にチェックをいれると,インストール済みである 最新版wxMaximaのショートカットに上書きされてしまいます. 間違って上書きした場合はショートカットを削除して, 最新版のwxMaximaのショートカットを 作成してください.


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 次に,TeXmacsをダウンロードします. 下記のサイトからダウンロードできます.

Welcome to GNU TeXmacs

 下図がトップ画面です. ここに表示されているような文書を作成できるようようです.


 「Download」をクリックすると,ダウンロード画面に変わります.


 上記の画面では, 「TeXmacs-1.99.9-installer.exe」をダウンロードするように設定されています. その箇所に表示されるファイルが最新版です. TeXmacsの古いバージョンは,右端にある「another here」をクリックすると 表示されます.下図が,過去のバージョンのリストです. ファイルが古い順に表示されるので, 上部に表示される「Last modified」をクリックして 最新のものから表示させます.


 古いバージョンをインストールするときは, この中から選択してファイルを保存します. とりあえずは,最新版をインストールしてください. 保存されたTeXmacsのファイルをダブルクリックすると インストール作業が始まります.保存先のフォルダー名や スタートアップフォルダーへのショートカット登録などの 確認を求められた後にインストールが始まり, 終了すると次の画面が表示されるので, 「Finish」を押してセットアップを完了させます.


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 次に,TeXmacsを起動します.スタートボタンを押すと 「最近追加されたもの」に「TeXmacs」のアイコンが表示され, デスクトップにも同じアイコンが追加されています. 下図は,最初にTeXmacsを起動させたときの初期画面です. クリックして立ち上がるまでには,ちょっと時間がかかります.


 この画面は,TeXmacsをインストールして最初に起動したときの画面です. この画面は,いったん閉じます.終了させるには, 「ファイル」から「Texmacsを閉じる」を選択するか, 「ctrl-Q」を押すか,または右角の「×」をクリックします. もう一度TeXmacsを立ち上げると次のような画面になります.


 この状態では,まだMaximaは使えません. Maximaを組み込むには,トップメニューにある「挿入」をクリックして, 表示されるサブメニューの最後にある「セッション」をクリックします. 挿入できるアプリ名が表示されるので,その中の「Maxima」をクリックします. TeXmacsとMaximaのバージョンによっては, この「セッション」の箇所に「Maxima」が表示されません. ここでの説明のようにしてもうまくいかないときは, TeXmacsやMaximaのバージョンをさらに落として試してみるとよいでしょう.


 上記の「挿入>セッション」で「Maxima」をクリックすると下図が表示され, この画面でMaximaを利用することができます. 冒頭の例示画面は, このようにしてTeXmacsにMaximaを組み込んで実行した画面です. 式を入力後に[Enter]を押すと, 入力式の最後に「;」が付加されて結果が表示されます. [shift][Enter]とすると改行されて実行はされないので注意してください.

 なお,10年以上も前の解説になりますが, 下記でも「TeXmacs+Maxima」について詳しく解説されています.ただし, ダウンロードやインストールの方法はかなり古いファイルで解説されているので, その箇所は読み飛ばして 後半にあるMaximaの基本的なコマンド解説を参照してください.  TeXmacsを終了するには,「ファイル」から「TeXmacsを閉じる」を選択する, 「ctrl-Q」を押す,または右上角の「×」をクリックします.
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imaxima
 Maximaをエディターの中で利用することもできます.「imaxima」です. UNIXのエディターとして著名なEmacs上で利用することができます. Emacx上でimaximaを組み込みと,エディターの中でMaximaを動かすことができます. 出力はTeXによる出力になります.使用されているTeXは「MiKTeX」です。
 実際にはWindows版のEmacsを利用することになりますが, imaximaを組み込むには, まずEmacsというエディターの使い方に習熟している必要があります. EmacsはWindowsの通常のエディターとはキーバインドが大きく異なるので, それを使いこなすには強い「決意」と「慣れ」が必要です. また,Emacsを使えるようにするまでの準備段階では, LISP言語の初歩的な知識も必要になるので, Windowsユーザーにとってはかなりハードルが高いかもしれません. 少なくとも,「ちょっと試しにやってみたい」という意識レベルでは, 試してみることすら難しいでしょう。 「使用しているエディターをEmacsに切り替える」という強い思いが必要です.
 私は,以前はEmacs系のエディターである 「Mule」を使用していて,漢字変換には 「SKK」 を使用していたことがあります.この項目を書くために, 昔を思い出しながらちょっと試そうと思いましたが, 日本語入力ができるようにするところで挫折してしまいました. すでに,使い方自体を忘れてしまっていました。 imaximaや日本語を利用できるEmacsは下記よりダウンロードできますが, それを実際に利用可能な状態にするにはかなりの困難が伴うと思われます. 最初の初期ファイル(init.el)をどのように設定するかがポイントです.

★imaximaでは,その入力と出力結果をそのままTeXのソースファイルに 変換することができて, 変換されたファイルはそのままコンパイル可能であるようです. 関心を持たれた方は挑戦してみてください.

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maxima, xmaxima
 Maxima がインストールされたフォルダーのサブフォルダーに [bin] があり,その中に「maxima.bat」があります. このバッチファイルをダブルクリックして実行すると, 下図のような DOS モードの Maxima が立ち上がります. ここではコマンドを入力するしかなくメニューを利用することはできませんが, この画面でも Maxima の全機能を利用することができます. wxMaxima ではコマンド入力時に「;」を省略できましたが, ここでは「;」を自分で入力する必要があります. 結果出力は,[shift][Enter] ではなく,単に [Enter] だけでかまいません. Maxima が開発された頃の入力・出力スタイルは,このようなものでした. つまり,すべてが英数半角記号で表示されます.
 なお,Maximaではネイピア数を「%e」で表します. 終了するには 「quit();」とするか,または右上の「×」をクリックします.

 同じ [bin] のフォルダーにある「xmaxima.exe」をダブルクリックすると, コンソールタイプの Maxima が立ち上がります. 幾つかのトップメニューが表示されていますが, 基本的には DOS モードの Maxima と同一です. 背景が白くなっているだけです. ただし,私の使用環境では, 指数や分数の表示位置がちょっとずれるようです. 積分記号も半角英数字の組み合わせで表示されます. (%i5)のように「'integrate」として「'」をつけると, 積分の計算は行わないで積分の式がそのまま出力されます. (%o5)では, \(\small \displaystyle \int e^{-x}\cos(x)\,dx\) を 半角英数字で表現した式が表示されています. なお,微分計算の「diff」も,「'diff」とすると微分記号の式で表示されます.

 終了するには,[File]から[Exit]を選択するか, または右上の「×」をクリックします.

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iPhone/iPadの場合
MaximaのiOS版は提供されていません. したがって,iPhone/iPadでMaximaを利用することはできませんが, 無料また廉価で利用できる数式処理ツールが多数あるので, それを利用するとよいでしょう. 以下に,幾つか紹介します.
  • Maxima on Web
    これは,Web上で無料で利用できるMaximaです. Maximaをインストールしなくても,Web接続ができれば利用することができます. こちらを参照して下さい.
  • SageMath
    これは,数学関連の教育・研究を支援する多数のソフトウェアをまとめた フリーのパッケージで,iOS版もあります.この中にMaximaも含まれていますが, そのインストールや利用は簡単ではないかもしれません. 実際にはPython上で動いているようなので, Pythonを利用されている方は試してみるとよいでしょう. 詳細はこちらを参照してください.
  • 数式処理可能なグラフ電卓アプリ
    iOS上で数式処理可能なグラフ電卓の機能を利用できる有料アプリがあります.
    • TI-Nspire CAS
      テキサスインストルメント社のグラフ電卓「TI-Nspire CAS」のiPad版です. iPhoneにはインストールできないと思います.
    • Emu50G
      ヒューレットパッカード社のグラフ電卓「HP50G」のMac版です. iPhone, iPad, iPod touch, Macで動作するようです.
  • 他の有料アプリ
    iOS上で利用できる有料の数式処理アプリとして, 他にも幾つか知られています. 有料といっても,1000〜3000円程度なので, 必要な方は「App Store」でインストールしてみるとよいでしょう.
    • MathStudio
      有料版では,このアプリが価格も手ごろで好評を得ているようです.
    • Pocket CAS
      このアプリも好評のようです. お試し版として,ちょっと機能を落とした無料版もあります.
    • iCAS
      古参の数式処理ソフト「Reduce」をアプリ化したものです.
    • iPhone/iPod touchで数学する24の方法
      上記以外の多数のアプリが紹介されています.
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■数学学習での活用


■「Maxima」のリンク集
ここでは,Maximaの利用法を解説しているWebサイトを紹介します. コマンドの詳しい使い方などを知るとき参照してください.
  • いつでも・どこでも・スマホで数学
    拙著によるスマホ(Android)利用の場合の解説です. 使用しているコマンドはPC版と同一なので, PC版のコマンドリファレンスとして利用することもできます. 「数と式の計算」「方程式の解法」「数列と微分積分」「ベクトルと行列」 の章に分けて解説しました.
  • Maxima入門
    Maximaの概要が紹介されており,式の計算,微分積分,行列,プログラミング, そして2次元・3次元のグラフについてwxMaximaの画面で簡潔に説明されています.
  • Maxima入門 [PDF: 54頁]
    高知大学理学部数理情報科学科の講義で利用されたファイルです. 式の計算,方程式,微分積分,行列と行列式,平面図形・空間図形,プログラミング, についてwxMaximaでの利用法が解説されています.
  • Professional Maxima[PDF:79頁]
    いろいろな式の計算,微分積分,そして行列の基礎計算について説明されています. 昔のセンター試験の問題を題材にして解説している箇所もあります.
  • Maxima入門ノート [PDF:165頁]
    Maximaの基本的な使い方,グラフ描画の仕方,数式の操作,微分積分, ベクトルと行列,プログラミングなどについて解説されています.付録では,Mathematicaとのコマンドの違いについて表形式でまとめられています.
  • 高校生のためのMaxima
    以前の教育課程で,数学T・U・Vと,数学A・Bにある例題が Maximaで解かれています.
  • Maxima入門 ー高機能なフリーの数式処理システムー[PDF:31頁]
    Maximaの生い立ちから始めて, 基本的な計算,微分積分,方程式の求解,ベクトル・行列,グラフ, そしてプログラミングまで,wxMaximaを用いて解説されています.
  • 計算機基礎:Maximaの使い方
    Maximaの基本的なコマンドの使い方について簡潔に説明されています.
  • wxMaximaの使い方
    弘前大学の情報リテラシーのテキストのようです。 wxMaximaのコマンドの使い方について説明されています.
  • Maxima Manual
    2007年の解説ですが, Maximaのインストール,TeXmacsのインストール, そしてMaximaの使用法について非常に詳しく解説されています.
  • 入力例で学ぶMaximaの使い方(入門)
    Maximaのコマンドの使い方について解説されていますが, 入力例のみで出力結果は示されていません. 結果を確認するには自分で実際に入力してみる必要があります. Maximaの利用例として,微分方程式,フーリエ級数,行列の対角化,ベクトル解析 などの記事も登録されています.
  • Maximaによる行列計算超入門 [PDF:13頁]
    行列に関して,行に関する基本変形による連立1次方程式の解法までの 利用法が説明されています.
  • 行列計算における数式処理ソフトMaximaの利用 [PDF:106頁]
    行列の固有値・対角化・線形写像やベクトル解析での利用法が説明されています.
  • Maximaで微分方程式を解く
    微分方程式と連立微分方程式の解法について, 力学の具体例をもとに説明されています.
  • Maximaを使った物理数学基礎演習ノート [PDF:440頁]
    Maximaを使った物理数学として,微分・積分,微分方程式, ベクトル解析,複素解析,フーリエ解析,円柱関数と球関数, ラプラス変換,変分法,積分方程式などでの使い方が説明されています.
  • Maximaを使った流体力学基礎演習ノート [PDF:713頁]
    上記と同一著者によるもので, Maximaを使った流体力学での本格利用例がまとめられています. 流体力学は「数学のオンパレード」といえる程に数学が駆使される分野です.
  • 統計学教育における数式処理システムの利用 [PDF:11頁]
    「Maxima」の数式処理機能を活用しながら統計教育を進めることの利点について, 具体例をもとに解説されています. 正規分布,カイ二乗分布,t分布,F分布まで扱われています.
  • pianofisica
    個人ブログですが,Maximaの使い方について利用例が紹介されています. モンテカルロ法,調和振動子,最小二乗法,KdV方程式の解, ベクトル解析 等々の利用例があります.
  • Maximaで綴る数学の旅
    「Maxima on Android」の開発者のサイトです. ガロア群,楕円関数,佐藤テイト予想,ゼータ関数など, 高度の数学的な話題がMaximaで取り扱われています. このアプリをスマホにインストールすると, スマホを本格的な数式処理システムとして使用することができるのです.
  • Maxima 5.42.2 Manual
    Maxima の公式マニュアルが翻訳されたものです. スマホで利用できるMaxima on Androidには, このマニュアルが丸ごと含まれており, そこでの実行例をMaximaの画面に取り込んで自分で修正しながら 試すことができます.なお, 英文ファイルはこちら [PDF:1196頁]です.
  • Maxima でお絵かき
    Maximaでグラフ描画を行うことに特化して, 詳しい解説がなされています(73頁)。
  • Maxima マニュアル改訂版
    上記の公式マニュアルをみてもよく分からないときや 専門的な情報を知りたいときは、 このマニュアルを利用するとよいでしょう。 通常は触れられない内部変数についても解説されています(308頁)。 下記の簡易版のような内容です。
  • はじめてのMaxima [PDF:1184頁]
    タイトルは「はじめての」となっていますが,全く初心者向きではありません. Maximaの記述言語であるLISP言語にまで及ぶ解説がなされています. 千ページ以上の大著です.
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